『第九 An die Freude(歓喜の歌)』へのつぶやき::タクトは振られた・・・ホルンと弦楽器の見事なコンビネーション/ 第1楽章:2021.12.16号
静寂した中にも期待の込められた空気の中で、ついにタクトが振られた。
神秘的な細かい刻みの第1ヴァイオリン、ヴィオラそれにコントラバスの響きとホルンの優しい響きの音にのって奏でる冒頭は、これから始まる物語を暗示するかようだ。
なんと素晴らしい協調性の響きであることよ!
私たちは第4楽章の神々しい旋律を知っているから、第1楽章の第2主題から「ああ、第九だ」と連想できる。
しかし、初めて『第九』を聴いた人は、この第1楽章から何を感じるのでしょうか。
第1楽章は、第1主題と第2主題が絡み合って演奏(変奏という人もいます)され、徐々に盛り上がり、『第九』の目指す”大きな悟りへの境地”の心情が浮かび上がってくる。
外山雄三先生の『第九』の指揮姿から、「人類の平和と、みんな兄弟なんだ」というメッセージを強く訴え伝えていることを決して忘れてはならない。
僕のパートは「T1: トップテノール」
立ち位置は、ほとんどの場合ステージに向かって、右から・ソプラノ・テノール・バス・アルトの順であるが、しばしば・ソプラノ・アルト・テノール・バスの順の場合もある。
よって、テノール(T1)は正面であり、オーケストラ~合唱団員~観客席を一望できる位置でもある。目の前に、4人のソリスト。
ソリストはいつも堂々とした振舞であり、ソプラノ/アルトのソリストの舞台衣装の素晴らしさにも目を張るものがあった。
ステージに注がれたライトを浴び、興奮と緊張、そして歌い尽くそうという気力が湧いてきた。
ステージに入り、合唱団員は静かに第3楽章が終るまで座っているのである。
第1楽章の演奏を冷静であるが、興奮した面持ちで聞いていた。